ピジョン株式会社:パーパスとエンゲージメントのパワー

ピジョン株式会社は、1957年に日本で設立以来、60年以上にわたって世界中の赤ちゃんとご家族をサポートし続けている、育児用品のグローバルリーディングカンパニーです。同社は、「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」という存在意義(Purpose)の実現と、持続的な企業価値(社会価値・経済価値)向上を目指し事業を推進しています。
主要な事業実績
グローバル従業員数:3,000人以上
展開地域:80以上の国と地域
創業:1957年
(営業実績68年)
目指すゴール:この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所に
ピジョンには企業理念に「Pigeon Group DNA・Pigeon Way」があります。
- Pigeon Group DNA: ピジョングループの核であり、この先も貫いていくものです。経営理念「愛」と、それを端的に表現した社是「愛を生むは愛のみ」から構成されています。
- Pigeon Way: ピジョンが社会において存在する意味とすべての活動における“心”と“行動”の拠り所であり、「存在意義(Purpose)」と「Spirit」の2つで構成されています。
- 存在意義 (Purpose): 「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」
- Spirit: 存在意義を実現するための4つのSpirit「Integrity (誠実)」「Dedication (あくなき追究)」「Synergy (未来をつくるシナジー)」「Enjoy (ワクワクを力に)」に基づき、日々の行動を導きます。
「Pigeon Group DNA・Pigeon Way」は、社員一人ひとりが大切にする企業理念であり、グループ全体の意思決定、協働、イノベーションを力強く支えています。
アプローチ:従業員エンゲージメント調査の戦略的導入
従業員エンゲージメントは、同社が2023年に開始した中期経営計画の重要な要素として位置づけられ、さらに役員報酬にも連動する主要業績評価指標(KPI)として組み込まれました。これは、経営陣が人的資本を企業の価値創造における核心的なドライバーと捉えていることの証です。
ピジョンの人事チームは、グローバルに展開する事業全体で、従業員エンゲージメントを効果的に測定・管理・改善するための、信頼できる仕組みが必要だと早くから認識していました。
そこでパートナーとして選ばれたのが、エンゲージメントの測定と改善において豊富な実績と専門性を持つGallupです。Gallup社のQ12®エンゲージメント調査の導入の決め手となったのは、単にスコアを測るだけでなく、マネージャーと従業員の間に「意味のある対話」を生み出し、文化変革を後押しするという、Gallupのアプローチそのものでした。
GallupのQ12調査は、診断ツールであると同時に、建設的なチーム対話とアクションプランニング、イノベーションを促進するフレームワークです。わずか12項目の簡潔な設問でエンゲージメントを測定し、従業員の回答負担を最小限に抑えつつ、実行可能なインサイトを提供します。
マネージャーは、結果についてチームと直接対話し、重要な課題を特定したうえで、対話の中で解決策を共に創り上げることが奨励されています。
このような「試行錯誤を重視するマインドセット」は、ピジョンの企業文化にも深く根付いており、各部門でのアカウンタビリティ(当事者意識)や主体的な行動を育む土台となっています。
企業文化の推進役としての人事部門
ピジョンの人事部門のエンゲージメントチームは、組織全体の成功を後押しする、企業文化の推進役を担っています。その重要な役割の一つが、Gallupのコンサルタントと緊密に連携し、Q12を単なる調査で終わらせない仕組みを築くことです。Q12をきっかけとした対話やアクションプランの実践が、最終的に企業理念である「Pigeon Way」の体現に繋がるよう、一貫して各チームの活動を力強く支えています。

人事チームは、社員の意識改革や新たな試みを後押しするとともに、エンゲージメント向上の初期段階で戸惑うチームがあれば、積極的に介入し支援しています。
Gallupはピジョン人事チームと密接に協力し、調査結果の解釈の支援、優先課題の特定、今後の注力分野の明確化などの取り組みを伴走しました。両者は、エンゲージメントプログラムのあらゆる段階において、一体となったチームとして機能しました。
組織を超えた協働と多様性の力
ピジョンの強みは、部門や世代を超えた連携にあります。各事業所、各部門、異なる職種のメンバーがそれぞれの視点を持ち寄って協力することで、全社的に共感を呼ぶ創造的な取り組みが生まれています。このような多様な視点の融合こそが、イノベーションの源泉となっているのです。
Myパーパスの探求と、企業理念とのシナジー:
『My Purpose Project』
ピジョンのエンゲージメントストーリーを象徴するのが、『My Purpose Project』です。このプロジェクトは、トップダウンの戦略として始まったのではありません。
「社員が自分の仕事と会社のパーパスとの繋がりが見えにくくなっている。そこが見えれば、もっといきいきと楽しんで仕事ができるのではないか」
-- ピジョン人事労務グループマネージャー 渡辺氏
特筆すべきは、その進め方です。「会社のパーパスと繋げて考えるのではなく、まず自分が大切にしたいことを見つける事に注力し、その中で会社とのつながりを自然に意識できる流れを作った」と渡辺氏は語ります。このボトムアップの自己探求が、Q12を基にした対話と融合したとき、強力なシナジーが生まれました。最新の従業員調査でエンゲージメントとパーパスへの共感との間に強い相関関係が示されたことは、このアプローチの成功を物語っています。これは、社員が企業のパーパスに深くつながることが、エンゲージメントを高め、ひいては組織全体の進化を促進する力となっていることを意味しています。

Pigeon Frontier Awards 発 『My Purpose Project』
エンゲージメントカードを通じて自分の大切にしている価値観を全社員が再認識する
エンゲージメント課題の克服
ピジョンにとって、エンゲージメント向上の道のりは平坦ではありませんでした。ピジョン人事チームは、Gallupと協力して成功を妨げる可能性のある課題を特定し、積極的に対処しました。
- チーム間のバラつき: チームによって、エンゲージメントの初期のスコア水準に差がありました。特に低い水準からスタートしたチームでは、オープンな対話と一貫したフォローアップを行い、2回目の調査時に大きな改善が見られました。
- マネージャー支援の必要性: エンゲージメントの成否は、各マネージャーの関与に大きく左右されます。導入当初、多くのマネージャーが調査結果の解釈や活用方法に戸惑いを抱えていました。そこでピジョンは、マネージャーへのコーチング支援や協働型のアクションプランニングを通じて、マネージャーとチームが主体的に取り組めるよう後押ししました。
- 業務過多のチームへの配慮: エンゲージメント活動が過度な負担とならないように、ピジョン人事チームは、各部門の状況に配慮し、適切なサポートを提供しました。
これらの課題は、単なる障壁ではなく、学びと成長の機会となり、ピジョンのエンゲージメント戦略の改善と強化に貢献しました。
成果:エンゲージメント成功の鍵
ピジョンが目指すのは、単にエンゲージメントの数値を向上させることではありません。社員一人ひとりが心身ともに満たされ、いきいきと働くことを通じて、存在意義である「赤ちゃんを真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」と掲げた内容を実現していく。 そのための本質的な組織づくりこそが、真の目標です。
「Gallupが他と一線を画していたのは、“意味のある対話”に重点を置いていることです。Gallupのアプローチは、チームが自らを振り返り、対話を重ね、行動計画に主体的に取り組む力を引き出してくれます。この考え方は、私たちの理念と完全に一致しています。エンゲージメントは信頼と対話、そして共有されたコミットメントを通じて、チーム内で自然に育まれるべきものだと考えています。」
-- ピジョン人事労務グループマネージャー 渡辺氏
ピジョンのエンゲージメントの取り組みは始まったばかりですが、初年度には着実な成果が見られました。特に日本国内の従業員エンゲージメントは大きく改善され、Gallupが保有する日本企業のエンゲージメントベンチマークデータベースにおいて、ピジョンのポジションは22ポイント上昇しました。グローバル全体でも、エンゲージメントは6ポイント改善しています。
ピジョンのエンゲージメント成功を支えた7つの要因
- 意義ある介入施策
エンゲージメント施策は、社員の理性と感情の両面に訴える体験となるよう設計されており、信頼、対話、そしてエンゲージメント向上に向けたチームの共同コミットメントを促進しました。 - 率直なマネージャーとチームの対話
当初はQ12調査の簡潔さに対する懐疑の声もありましたが、直接的なフィードバックと迅速な行動が信頼を生み、現場レベルの変化へとつながりました。人事によるチーム別分析とターゲットを絞った対話により、具体的かつ実行可能なアクションが各チームで実現しました。 - ローカライズされたアクションプラン
チームごとに独自の文化やダイナミクスを反映した共同作成型のアクションプランを策定しました。たとえば、ある部門では、月例ミーティングで各メンバーの視点を共有し、重点的な課題を明確化し、相互支援を図る取り組みが行われました。 - 人事とGallupの強力な連携
これまでの成果は、ピジョン人事チームとGallupとの綿密な連携によって実現されました。このパートナーシップにより、マネージャーは自チームの調査結果を深く理解し、改善に向けた行動を明確にできました。この協力関係こそが成功の鍵となりました。 - グローバルでの適応力
アクションプランは日本が先行する形でスタートしましたが、中国やシンガポールのビジネスユニットも自国のビジネス環境や文化的背景に応じたアプローチを採用しました。ベストプラクティスの共有と文化の違いへの尊重により、ピジョンはグローバルにエンゲージメントを拡大させています。 - 存在意義とのつながり
チーム内の対話は、My Purpose Projectの後押しもあって、社員が日々の業務と会社の存在意義とのつながりを再確認する場となりました。このことがチームの活力を高め、職場改善への意欲につながっています。 - リーダーシップの支援
取り組みの初期段階から、ピジョンの経営陣はエンゲージメントの重要性を共通認識として持ち、KPI設定などを通じてそのコミットメントを明確に示しました。チームレベルの変化と文化的変革を支える「意味のある対話」の促進に尽力してきました。
今後の展望:戦略的資産としてのカルチャーとエンゲージメント
ピジョンは、エンゲージメントの取り組みはまだ始まったばかりであると認識しています。同社のリーダーにとって、エンゲージメントとは「会社と社員の信頼関係の強さ」の指標であり、組織と社員が互いの成長に貢献し合う関係性を築くための基盤です。
持続可能なエンゲージメント文化を育むことは、ピジョンの持続的成長と未来に向けたビジョンを実現させるために不可欠です。企業理念と、それを体現しようとする人材とが強く結びつくことで、究極的なゴールである「この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にする」旅を続けていきます。